みなさま、こんにちは。クエルダ開発担当の渡部公也です。
連載を終えて通常ブログに戻ります。本日は会社内の「AI化を進めなければならない」という方と共に、一旦立ち止まって整理しましょうという回です。
私が仕事でAI使ってるよというと「モデルは何使ってる?」「何を自動化した?」とよく聞かれます。そこから「うちは、これこれこういうふうに・・・」とお話を聞く機会が増えてきたので、そこでよくお話する私の考えをここでお話します。
企業で進む「業務のAI化」とは何か
文章作成、情報整理、問い合わせ対応、データ入力、集計など、さまざまな業務へのAI導入が始まっています。これを「業務のAI化」と捉えられる場合が多い印象ですが、私は「業務」に焦点を充ててみました。
ここで「あれっ?」と思うことがあります。まだAIが一般的でなかった数年前、企業のDX化の取り組みとしてRPA(Robotic Process Automation)を進めようという試みがあった事を思い出します。
データベースからエクスポートされたデータをEXCELマクロでインポートし報告書として集計表を自動作成する、のようなイメージです。
さて、RPAで行った「集計表の自動作成」をAIエージェントが行えるようにしたとしましょう。でもこれも「業務のAI化」と呼ばれる範囲にあるのも事実です
すこし変ですよね。なので、ます「業務」とはなにかという問いを整理する必要があるのです。その上でAIに任せる「業務のAI化」の定義をはっきりさせます。
AI化の出発点は業務の棚卸し
組織全体の棚卸しの前に、メンバー個々の棚卸しをしたほうが全体が見えやすいです。一方、具体的な業務改善は組織全体として上から俯瞰したほうが無駄がありません。
理由は、いちメンバーのいち業務を経営層は把握していない場合がほとんどです。いちメンバーは自分の所属するチームにとって必要な業務だと信じていますが、残念ながら経営層からは不要な業務である場合があります。永年の慣習から、仕事をするための仕事があちこちに点在している組織も少なくありません。これらを顕在化することではじめて組織全体のAI化による業務改善の判断材料が揃うことになります。
メンバー個々の棚卸しで整理するのは次のような点です。
- その業務は何のために行っているのか
- どのような手順で処理しているのか
- 判断が必要な箇所はどこか
- 例外が発生した場合はどうするのか
- 最終的な責任を誰が負うのか
これらが出揃ったら、チームまたはマネージャーが個々の業務について次の役割分担をします。
- AIに任せる/li>
- RPAに任せる/li>
- 既存システムで処理する/li>
- 引き続きメンバーが担当する
AIより人の能力を信じてよいこと
1 + 1 = 2 あなたはこの簡単な計算を頭で考えるまでもなく100%の正解率で答えられます。確実です。次にアナログ時代の文房具である電卓で同じ計算をします。答えは同じく 2 です。間違いなく正解です。
なぜ間違い無いと断言できるかは、私がエンジニアであり、電卓のような工業製品の計算ロジックを司るプロセスモデルを理解しているから断言できるのです。いや、それ以前に子供の頃から正解は確固たる事実として認められてきたからです。では、AIに 1 + 1 の答えは?を聞いてみましょう。
もちろん「 2 」と答えますが、前者とは異なります。但し書きに「間違っているかもしれないので確認せよ」と注意書きが併記されます。これがAIなのです。
人の作ったプログラムでも間違うことはありますが、それらはバグとして改修され、間違えないように改善されますが、AIは改善されること無く常に正しい答えを求めるなら自分で確認せよというスタンスなのです。
話が長くなってしまいそうなので、次へ進みますが、AIが悪いと言っているわけではなく、人の優れた能力はなにもAIに置き換える必要は無く、むしろ人が続けることが重要だと言うことです。
例えばEXCELに各店鋪の前月売上と前年対比のデータがあるとします。あなたはそのデータをただ眺めているだけではなく、各店舗の外観や内装、人通り、客層、そこで働くスタッフの姿、気質、性格まで把握しています。
ある店舗の特異でもない普通のデータ見て、直感的に「席数を減らして客単価を上げよう」と判断します。ほとんど直感です。失敗する可能性もあります。この判断が正しいか否かではなく、投機的可能性で否定できない直感という、言語化が困難な高度で瞬間的な思考という武器を持っているのも人なのです。
AIにより答えだけを求め、プロセスを見ないようになると、この直感が作用しなくなる恐れがあります。あなたの元には「◯◯店は廃止したほうが得です」という推論で導き出された一文しか来なくなるといったことは是非避けたほうが良いです。
ツール先行のAI化が新たな問題を生む
便利そうなAIツールを個別に導入するだけでは、必ずしも企業全体の業務改善にはならないという問題提起です。
ツール導入が目的になると、次のような状況が起こる可能性があります。
- 似たようなAIサービスが社内に増えてコストが膨らむ
- 担当者ごとに異なる自動化が作られる
- 管理されていない「野良RPA」や「野良AI」が増える
- AIが作った低品質な文書が大量に発生する
- 誤った結果が出た場合の責任が分からなくなる
- 作成した仕組みが担当者の退職後に保守できなくなる
- AIの成果物が実務で使われず、導入自体が目的になる
特にAIエージェントが業務を自律的に進める場合は、「誰が許可したのか」「どこまで実行してよいのか」「誰が結果を確認するのか」を決めておく必要があります。
AI化によって仕事が整理されるとは限らず、整理されていない業務にAIを追加すると、混乱まで自動化されるという笑えない現実が待っています。
業務AI化の本質は人と業務とシステムの再設計
最後に、AI導入の本当の目的を整理します。
重要なのは、個別のツールを追いかけることではなく、まず企業として普遍的なゴールを定めることです。
例えば、
- 何を改善したいのか
- どの業務時間を減らしたいのか
- 品質をどのように高めたいのか
- AIの成果を誰が確認するのか
- 問題発生時に誰が責任を持つのか
- 導入効果を何で測るのか
を明確にします。
そのためには現場担当者だけでなく、経営層や管理者も関与し、AI活用の方針、責任、評価方法、ガバナンスを整える必要があります。
A企業における業務のAI化とは業務改善の答えではなく、整理された業務を実現するための手段の一つである、と考えさせられました。
